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八ヶ岳から吹く風 PART 2

八ヶ岳のふもとにある諏訪中央病院で地域医療と若手医師教育を行なっています。医学生や一般の方にもわかりやすく正しい医学情報を発信したいと思います。名古屋の大同病院、会津の福島県立医科大学会津医療センター、郡山の太田西ノ内病院と総合南東北病院でも医学生&研修医教育の機会をいただいています。

『スマホ時代の哲学』

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谷川嘉浩著『スマホ時代の哲学』を読んで

スマホは、いまや私たちの生活に深く根を下ろし、なくてはならない存在となりました。指先ひとつで世界とつながるこの時代において、私たちはかつてないほど多くの情報と、複雑な人間関係の中に身を置いています。

しかし、その一方で、「誰かとつながっているのに、どこか孤独を感じる」

そんな感覚を抱く人も、少なくありません。

本来、人が深く考えるためには、外の世界から少し距離を置き、ひとつのことに静かに向き合う時間が必要です。自分の内面と対話する「孤独」は、決して寂しいものではなく、むしろ人を豊かにする時間であると述べられています。

けれどもスマホは、私たちの注意を次々と引きつけ、絶え間なく情報を与え続けます。その結果、何もない静かな時間、つまり「孤独」を感じる余白が、少しずつ失われています。

「自分の頭で考えなさい」 皆さんは、きっと何度も耳にしてきた言葉でしょう。けれども、ひとりで考え抜くことには限界があります。他者の知恵や経験に耳を傾け、その視点を借りながら考える。すなわち「他人の頭で考える」こともまた、深い理解へと導く大切な営みであると説いています。

「ネガティヴ・ケイパビリティ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。それは、「すぐに答えを出さない力」です。答えの出ない問いや、説明しきれない感情に出会ったとき、無理に結論づけず、その“モヤモヤ”の中にとどまる能力です。

すぐに正解を求めがちな現代において、わからないままに感じ、考え続ける姿勢は、人の心に寄り添う看護師にとって、とても大切な力になるでしょう。

さらに、本書は「趣味」の大切さにも触れています。何かに没頭する時間は、他者から離れ、自分自身と静かに向き合う時間を与えてくれます。

退屈や不安から逃れるために刺激を求め続けるのではなく、あえて立ち止まり、自分の内面に目を向けること。それは、これから医療の現場で多くの人の人生に触れる皆さんにとって、かけがえのない支えとなるはずです。

看護師をめざす皆さんへ、校長として伝えたいことがあります。

  • 一日の中で、ほんの少しでもよいので、スマホを手放す時間をつくってください。静かな時間の中で、自分自身と向き合う「孤独」を、どうか大切にしてください。
  • 答えの出ない問いに出会ったときは、焦らなくていい。そのモヤモヤを抱えたまま、「感じる力」を育ててください。
  • そして、何か夢中になれる趣味を持ってください。それはきっと、あなたの心を支え、人生を豊かにしてくれます。

季節は、ゆっくりと春から初夏へと移り変わっています。私は今年もまた、趣味である家庭菜園にきゅうりやミニトマトを植えようと思います。